さよなら雄浜その2
さて、いよいよ今日が雄浜最後の白浜での一日です。 …その割には、毎度のことながら、白浜温泉で一泊したわたしたちは、朝イチの開園に間に合わず(たいていダンナが悪い) バタバタと駆け込んで、園内を走る羽目に(どうせ、走ったのは私だけですけど) 今日はバックヤードツアーに参加するわけじゃないし、いっか〜なんて呑気に考えていた私は、パンダランドに着いて 叫ぶ羽目に…。そうです、双子ちゃんが、屋外運動場デビューしていたんですね。 パンダは高温になると室内運動場にひっこんでしまうので、朝の涼しいうちしか外にはいないわけで…。 なので、屋外運動場はデビューしたものの、ごくごく短い時間しか外には出ていないってことをすっかり忘れておりました。 私が着いた時にはすでに屋外運動場は人だかり。きゃー、またしても遅れを取ってしまった〜! 慌ててカメラを取り出し、写真を撮ったり、ビデオを回したりで、大忙しです。
そうだそうだ、双子が外にいるのを私はまだ見たことがなかったんだ。でも、双子は朝のうちしか外に出ないから、 涼しくなるまでは見られないかもな〜なんて勝手に自分で思っていたんだ。でもでも、思いがけず、この時期に来ることが できたから、それこそ朝イチの涼しい時間帯ならば外に出ているんだ…。あああああ!(←後悔の嵐) 双子ちゃんは私が着いてから5分とたたずに撤去されてしまいました。(くすん) ダンナの朝風呂は禁止だあ!!(もっと早い時間に朝風呂に入れ>ダンナ)
あああ〜なんて思いながら、室内運動場へ来てみれば、そこここに、お揃いのパンダのTシャツを来た集団がいます。 背中には『大熊猫帰国迎親団』なる文字も(簡易体で書くのめんどー) おお、これが噂には聞いていた、『パンダちゃんお迎え団』の方々なのだなと一枚記念撮影。 ぐるっと見渡せば、テレビクルーもたくさんいるし、中国語もそこここで乱れ飛んでおります。 なんだかただならぬ気配。しかし、そんなことどーでもいいよといわんばかりに、朝から食いまくっているお二人さんを発見。
ラウとユウのツーショットも今日で見納めかあ…と思ったらなんだか泣けてくるではありませんか。 テレビ局の人は、そんな涙ぐむ人たちをカメラに収めるべく取材攻撃をかましてくるし 。ほっといてくれよ!(苦笑)でも、隣でインタビューを受けられていた方のお話なんて聞いていると、 「もう行っちゃうんですね」うるうるな気分が伝染してきて、またまた涙が止まらない状態です。 朝からこんなにハイテンションで大丈夫なのか?>ぢぶん、って感じ。
そんな周囲の感傷的な雰囲気とは別に、ガラスの向うではパンダたちがいつもの生活をしています。 室内に戻ってきた母子グループもまだ活動期とみえて、しきりとあっちうろうろ、こっちうろうろをしています。
なんだかホッとしますわ>パンダの日常。それを見つめる我々の緊張感の方が異常なだけで、 彼らはいたって日々是好日みたいな感じで。ただね、ユウちゃんが行っちゃうってのは曲げようもない事実で、 明日にはここからいなくなっちゃうのは確かなことなんだけど…。 たぶん、当の雄浜自身だって、自分がここからいなくなっちゃうんだなんてこと、 夢にも思ってないのだろうなと。
まあ、そうやって父も母も日本にやってきて子どもを成したわけで。 でも、日本で生まれた子どもが中国に帰るのは初めて。 ともなれば、日本側も中国側も緊張はするだろうなあ…。
そんな中でも元気に駆け回っているのが、次期パンダプロレスの後継者と目されている二人のちびっこ。 湿っぽい雰囲気を蹴散らすかのように、てっこてっこと走り回ってはくんずほぐれつの追いかけっこを繰り返します。
時には、とことことガラス際までやってきて、よっこいしょって感じで立ち上がり、ニコニコと愛嬌を振りまいてくれます。 ここらへんの客あしらいのうまさは雄浜譲りですなあ。さすがに血は争えない。その点、ラウはお客様に媚びるような 行為は一切しませんので、生意気に見えたりするんですけど、まあ、ラウはそういうところがよさでもあるわけだから して別に、その…(←何を 遠慮しているんだろう、ラウに)
で、他人のご飯風景ばかり見ていたけど、そろそろ自分のおなかも空いてきましたって時期。 うちにも一匹欠食児童(って年でもないか>ダンナ)がいるので、お昼をたべさせに(笑)行くことに。 本日のメニューは「丼亭」で「うどん&まぐろ丼」と「エビフライ定食」でした〜。ウマー♪ 戻ってきてみたら、ユウちゃんもバックヤードでミルクをもらって飲んできた後らしく戻ってくるところでした。
この時は、何でユウが手をぺろぺろなめているのか判らなかったのですが、 後でパンダ教室に参加してみて、係の方にその旨質問したら「あれは、ミルクを飲んできて、それが付いていたので いつまでもなめていたんだと思います。一頭ずつ飲ませないとケンカになってしまうので(笑い)1頭ずつ 裏に引っ込んでミルクをあげるんですが、それをいつまでもなめているんだと思いますよ」とのこと。 (この時、ユウちゃんカレンダーをすかさずゲットしました)
そういえば、昨日ラウに破壊しつくされたすべりだいは、復旧工事がなされたようで、すごくシンプルな作りに なっていました(苦笑)あの破壊っぷりを見て、滑り台の行く末を案じていましたが、とりあえず修復はできました、と。
そして、腹もふくれたし、今日の興行はどうですか〜?ってなもんのお二人さんです。 ユウちゃんのかまってチャン攻撃から入るパターンかと思いきや、あんまりラウが乗ってこない。 二人とも「最後くらい仲良くしとく?」なのかあんまり本気の取っ組み合いにはなりません。 こっちとしては「最後の姉弟プロレス」を見たいなーって思っているのですが。
ユウちゃんは落ち着きなくせわしなく動いてますが、食ったら寝る!の正しいパンダ生活の継承者であるところの 良浜さんとしては、まず食ったら寝るでしょうってことで、丸太の上に上がっておくつろぎです。 ますます、ユウちゃんは手出しができなくなってきます。 おねーちゃんはそんな弟を無視するようにゴロゴロを始めますが、せわしなく動き回る弟に 苛つくのか、目を覚ましてしまいます。あーあ、寝起きのラウちゃんを怒らせると、いつもにも 増して怖いと思うけどなあ>ユウちゃん。 なんか、遊びたいんだけど、最後の最後で嫌われたくないし、おねーちゃんを遠巻きに眺めている弟、雄浜。 そのうち、ファンサービスの一環か、ガラス際にきてごろんとうつぶせ。 いろんなことを考えている風です。
何だかラウちゃんも落ち着かないようで、再度食べることでストレスを解消している女子高生(?←ラウに配慮しました) のごとく、ごそごそ起きだしてはまたご飯です。よー、食うやっちゃなあ…(あんまり他人のことは云えないと思うぞ>自分)
どうやら今日の姉弟プロレスは不発に終わるようです。 これが、本人たちが「自分たちの未来が判って」やっていることならば、そりゃすごいことなんではないかと…勝手に妄想。 最後くらいは本当に仲良く、仲良くのまま終わりたいじゃないかってことでね、プロレスなんて荒業じゃなくて、 ほのぼのとした姉と弟の交流で終わらせようという配慮ならば、それはそれで素晴らしい心遣いなんでしょうが、 もとよりそんなことを考えてパンダは行動してないと思うので、これまた私の勝手な妄想なわけで、 そんなことはどうでもいいのです。 さて、午後4時からは雄浜のお別れ会が屋外運動場で実施される旨、 アナウンスが流れます。室内での展示は4時までですというのですが、少し早めに屋外に出て、場所取りをして おこうとその場を離れると…。もう正面はテレビクルーで一杯です。私は正面から少し外れた場所で、それでも 一番前の場所をゲット。まだ室内では彼らの展示は続いているようですが、これはじっと我慢の子であっただな。 そんな時、右手に目をやれば誰もいないと思っていた屋外運動場にがさがさと何かが動く気配。 よく目を凝らしてみれば、向うの運動場の池(?)に、かわいいお耳がぴくぴくと見えているではありませんか…。 あの耳は、永明。なんておちゃめなんだ。今日は暑いから、水浴びですか〜?
パンダは体を冷やすために水に入るってのは、神戸のパンダちゃんたちもやっていたから見たことがありますが、 ここからだと耳しか見えないので、なんだかとってもお茶目に見えます。しかも、その耳、アンテナのように、 ぴくぴく動いて、周囲の音を拾っています。外が急に騒がしくなってきたので情報収集をしているため、 ぴくぴくしていたのかもしれません。 で。お別れ会の会場となる運動場の方では、着々と準備が進められて、雄浜にプレゼントされる「パンダパン」と 大好きなりんごが、パンダ型のテーブルの上にセットされ、時間は刻々と過ぎていきます。
そうこうしているうちに、周囲は人で一杯になり、式典の中で振る日本と中国の小旗が配られ、 いやがおうにも気分が高揚してきます。そんな騒ぎに敏感に反応したのか、永明は池からあがって、ぶるるるるーんと 体を振るってました。自分の息子の旅立ちに立ち会わねばなりませんもの。あれは、身支度を整えるための 風呂だったのかなあ…。
そして定刻の4時になり式典がスタート。 オエライ方々の挨拶が続き、飼育員の池永さんの挨拶が始まり、ユウちゃんファンの気分も高揚してきました。 いよいよ、本日の主役、雄浜の登場です。
のっしのっしとやってきて、正面にいる人の多さに圧倒されたのか、最初はちょっとためらいがちだった 雄浜も、自分の好きなりんごがあるのを見つけると、とことこやってきて、「りんごだ〜」と大喜びの様子。 その様子におおはしゃぎだった雄浜ファンの我々も、自分が主役の式典の意味が判ってない雄浜ちゃんの マヌケさにどどっと涙をながしてしまうのでした。 池永さんの挨拶もしめりがち。その我慢して明るく話している声にも、すでにもらい泣きです。 (実際は、のちに放送されたテレビ番組によれば、池永さんはあのスピーチを終えた後号泣されてましたね。 そうですよね、私もあの後から号泣してましたもん。泣かずにはいられない場面でした)
「雄浜はお父さんにそっくり。だから、雄浜も永明のような立派なお父さんになってくれると信じています」 そんな重大任務を背負って、中国に行くことになっていることを知って知らずか、当の雄浜は、大好物のメロンパン (『ユ』『ウ』『ヒ』『ン』『へ』とひとつずつにチョコレートでデコレーションしてある)にかぶりつき。そのマヌケさがまた涙を誘うのです。
そして、最愛の姉(?)ラウちゃんが登場です。もう姉と一緒に過ごせる時間はここでしかありません。 バックヤードに帰ったら、明日の帰国の準備で忙しいのです。今しかない、今しか一緒に過ごせない貴重な時間なのに、 ラウったら目の前の人の多さと、その異常な盛り上がりに気後れしたのか、なかなかバックヤードから出てこようと しません。
普段のラウならば、ご馳走が並んでいれば、人の分ぶん取ってまで自分が食べるんでしょうが(←美嶋の中のラウのイメージ) 今回ばかりは、ユウが主役ってことをわかっているのか、ぜんぜんテーブルの上のものに手をつけません。 まあ、ラウが来る一瞬前に、ユウちゃんが大好きなりんごを全部食べてしまっていて、ごちそうは残り、メロンパンしか 残ってなかったわけですが…。ラウはメロンパン好きじゃないのかな?(余談ですが、私もあんまりメロンパンは好きでは ありません。一方うちのダンナはメロンパン大好き人間で『ユウ』と呼ばれています。以上、余談でした) なので、ごちそうを食べ続ける弟の周囲をくるくる歩きまわるだけで、この場の異常な雰囲気を察知したかのように、 あちこち避難してまわります。
「おねーちゃんの食べれば〜?」と呼びに来た雄浜(←脳内妄想)。 「いやだね」と答える良浜(←前同)。なんだかラウはこの状況下から早く逃げたいようです。
そしてあらかたご馳走を食べた雄浜は、今度はテーブルで遊び始めます。 パンダの形をしたテーブルに乗ってみたり、ひっくり返してみたり。 もうやりたい放題。
明日いなくなるってのに、いたずらばかりしている弟と、何だかへんな雰囲気から早く逃げ出したい良浜。 良浜はこわがりだって性格がボードに書いてありましたけど、あの暴れん坊ぶりから「そんなことあるの?」 と思っていましたが。確かに、今日のラウを見ていると、何だか不安なことに対しては警戒心を抱くって 性格はあるのかもと思い直し。 そのうち、「ここにいるのはイヤだ!はやく中へ入れろ!」とばかりに、バックヤードの方に向かってアピールをします。 扉の前に立ち上がって中を覗いたり、落ち着きなくうろうろと歩き回ったり。 小心者ラウちゃんを初めて見ました。
一方ユウちゃんは、珍しくおねーちゃんにジャマされずにおいしいものを食べられるヨロコビをかみ締めながら、 メロンパンをはぐはぐ。暴れているおねーちゃんなんてスルースルーです。
そんな寄って来る雄浜には目もくれず、バックヤードに逃げ帰ることばかり考えているおねーちゃん。
そして 式典も流れ解散的に終了して、最後まで雄浜を見ていようって人だけが残りました。 しばらくは雄浜に動きがなかったので、ちょっと場を離れて戻ってきてみたら…雄浜がいません。 あれれ?と思っていたら、木の上に上っていました。 あらあら、そこって永明父さんがよく登っていた木じゃありませんか。 と思ったら、雄浜の視線の先には永明父さんの地べたにぺたんと腹ばいになった姿があるではありませんか。 (ただし、パンダは視力が悪いらしいので、見えていたのかどうかは定かではありませんがね)
上げ下げ扉の前には、ふて腐れたラウの姿もありました(苦笑) 「いつまでこんなトコに出しておくつもりだ!早く開けろ〜!!」ってなもんで。 なので、扉が開いたら良浜は、すたこらさっさと本当に逃げるようにして帰ってしまいました。
その後は、壁を隔てての父と子の会話。勝手にいろんな妄想を働かせて、いろいろな会話を楽しみます。 ああ、最後くらい一緒にしてあげられないんだろうか…父と子を。 (後でわかったことですが、午前中の双子パンダがここで遊んでいた時、やっぱり雄浜が永明側の運動場でごろりんと していて、ちょっとの間、兄と弟の会話ができたようです(ってアイコンタクトだけなんだろうけど) あ”ー、それも見たかった&見逃した。だから早起きしなくてはならんのですっ!)
そしてお客さんもまばらになった頃、木に登ったユウちゃんに「ゆ〜ちゃーん、かぁ〜わいいぃーねぇ」の声が飛びます。 それを聞きつけた雄浜「うん?ユウちゃんのことかわいいって云った?云った?云ったよね? え?かわいい?かわいい?もっと云って、もっと云って!」といわんばかりに、嬉しそうなそぶりを見せました。 ええ、見せたんです。誰が何と云おうとも、見せたんです!(強気)
それからは「ゆうちゃーん、かあわ、いいねぇ〜!」の声が飛ぶたびに、モデルさんよろしくポーズを作って見せる始末(苦笑) ありゃ、絶対に自分がかわいいかわいいって云われているって理解しているポーズだぞと私はひとりで大笑い。 ワンショット撮るたびに、ポーズを変えるモデルのごとく、カシャーンカシャーンの音ごとに、ポーズを決める ユウちゃんのサービス精神には畏れ入りました。 ああ、何て可愛いんだ!ユウヒン!!!
そして、午後五時。閉園です。この日ばかりは、双子パンダの撤収を見ることもなく、最後まで ユウちゃんに付き合うことに。木の上でゴロゴロしていた雄浜ですが、するするっと壁の出入り口が 開くと、「お、お帰り〜お帰り〜♪」ってことで、のしのしと元気よく歩いて、その姿を 壁の向うへと消していきました。
翌日は雨。というか、台風。 そんな中、飛行機は飛ぶのかどうか心配していましたが、どうにかこうにか飛んだようです。 雄浜の旅立ちは翌日早朝にも関わらず、多くの人が見送りに駆けつけ、アドベンチャーワールドの職員の方もずらっと並んで、 見送りをしたそうです。 今では遠い異国の地。(って、彼にとっては故郷なのかもしれないけど。白浜で生まれて、白浜で育ったんだから、 ユウは日本生まれの日本育ち、日本のパンダじゃないか!だから、誰が何と云おうと、異国の地なんだよ!フン) 遊んでくれるおねーちゃんもいないし、甘えさせてくれる飼育員さんもいないけど、 元気にバリボリと竹を食べ、寝たいだけ寝て、一人で遊び、元気に暮らしているようです。 ユウちゃん、そっちでも元気で暮らしてね。楽しかったよ>君がいた白浜の生活。 もし、私が再会することがあったとしたら、またかわいい声で甘えてくれたまえ。 そんな日が来るの、楽しみにしているよ。 (04.09.30)
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